僻南のまほろばを歩く

佐伯地方は宝の山と海、本当のまほろばはここにある。

2025-04-23から1日間の記事一覧

お為半蔵と国木田独歩

2024.03.13 龍王山(316m)と煙草山(260m)に登った。龍王山はその名の如く、雨をもたらす「八大龍王」を山頂に祀り雨乞を行った事に由来する。「屋形島」の龍王山も同様である。山名にしてはいないが龍王様を山頂に祀っている山は多い。それだけ人々は旱魃…

生簀に棲む男

2024.03.03 「青嵐、秋月、落雁、夕照、晩鐘、夜雨、帰帆、暮雪」は中国湖南省の山水画の画題である。「瀟湘八景」という。かつて御手洗家が「秋月橘門」以下佐伯藩の文人を蒲江に招いた時、一行は”蒲江浦八景”を漢詩に詠んだ。「青嵐」の風景として選ばれた…

畑野浦を見て死ね

2024.03.03 畑野浦恐るべし。 畑野浦峠からの展望はいつ見ても素晴らしい。その中心に「入津湾」がある。かつて佐伯藩四教堂教授「明石秋室」はその絶景に驚嘆し漢詩「入津坂」を詠んだ。 そこから降って畑野浦の港に面する小さな山(131m)を訪れた。知人が…

風と光と孤独と歩く

2024.03.02 「大原越」、京都大原を想起させて何だか情緒を感じさせる。勿論、三千院も寂光院もないし、”大原女”も多分いない。かつて佐伯領(上直見内水)から岡領(宇目大原)、延岡領(柚ケ内)と繋いだ尾根越えの旧道名である。 尾根は南北に長々と連な…

恒例行事

2024.02.28 今や"高齢行事"としても意味は同じかもしれない。 10年を超えて何と毎月一回、気の合う仲間が集まって会食し今に至っている。そうかと思えば、娘達が巣立って久しいのに、”桃の節句”が迫ると毎年菱餅と桜餅と蓬餅を自ら作って親しい人達に配って…

壊れない道は美しい道

2024.02.23 自伐型林業の”路網(作業道)”を表現した言葉である。「自伐型林業」が営まれる山は「癒される美しい森」を作り、そこに張り巡らされた路網(作業道)は「壊れない美しい道」として永続性を確保し、総体として「歩く道」に繋がっていく可能性を秘…

"佐伯の山"は歩いてこそ

2024.02.20 「稜線」と「尾根」、一般的には同じ意味に使われるが厳密には違うようだ。山頂と山頂を繋ぐ「主脈」の連なりが稜線で、山頂と平地を繋ぐ、あるいは麓に向かって伸びる「支脈」が尾根ということらしい。 「尾根ってこんな景色なんだ。だったら歩…

"ハルちゃん"が待っていた

2024.02.16 「佐間ケ岳」(328m)は本匠側から登って初めてその魅力が分かる。低山ながらも周囲の空間を圧してどっしりと腰を下ろした巨人のように見事な姿をしている。この山の秀麗な姿はその巨人の肩から袖に当たる尾根の形状の素晴らしによる。だからその…

洞穴勝負、蝙蝠嗤う

2024.02.11 生傷に湯船の熱い湯が沁みる。いずれの「石灰岩峰」もいきなり40度前後はあろうかと思われる急傾斜の登りが続いた。そこに時を超えて密かに眠っているまだ見ぬ「民俗史的洞穴」を目指した。 一方は大小の石灰石が斜面に緩く敷き詰められているよ…

海から眺めると裸麦の段々畑が金色に光っていた

2024.02.10 先日、佐伯史編さん市民講座「明治時代の佐伯の衣食住」(講師段上達雄氏、別府大学教授、佐伯史編さん委員会副委員長)を拝聴した。 特に興味深かったのは海岸地方の食を支えた「段々畑(段畑)」の意味するところである。いつ頃から拓かれたか…

若者はいた

2024.02.08 “Savoy”の主人から、「夜、空けておけ。」と随分前に連絡があった。当日、流石に何があるのだと問い詰めると、「本田重工(造船)の社長が来伯中で若者達と懇親する。お前も出席して喋れ。」との段取りがついていた事が判明した。 佐伯に滞在中は…

シシ垣の余命幾ばく

2024.02.07 久し振りに鶴見半島の「シシ垣」を見に行った(厳密には案内した)。シシ垣を知らない御仁は意外にも多い。現場を訪問したとなると極めて少ないのではなかろうか。 これは日本でも特筆すべきシシ垣である。半島尾根を這うように高さ2mを超えて延…

自然を屠る

2024.02.04 友人に誘われて「サバイバル登山家服部文祥氏」を招いての講演とシンポジウムに出席した。 つまるところ、論点は、「生きる意味」を問う事にあったように思う。自然との関わりを通じて自らがその意味を獲得して行った過程が淡々と紹介された。”サ…

老木

2024.01.25 以前、地元森林組合の若手に林業の実態について話を聞く機会が あった。 <若木> 2022.10.29 「自伐型林業」という耳新しい言葉に出会った。その現場を案内して頂いた。この若手にではない。歯科医をやっておられ山主でもあるT氏にである。延岡市…

老人の領分

2024.01.19 「子供のごつあろう。相手するんが大変じゃのう」、老人が自虐的に病院スタッフに漏らしていた。嫌味ではなく老人達にとって偶には漏らしたくなる感情の一片なのだ。この街の病院内のあちこちで繰り広げられる光景の一つに他ならない。 ここでは…

風物詩

2024.01.15 この地の「白魚漁師」は今や二人のみ、その内のお一人を「稲垣」に訪ねた。今が漁期にも関わらず今年で漁はやめてしまったそうである。遠く「尺間山」が寒々と見えるほどの曇り空の下、最盛期の漁を思い出すように仕舞い込んでいた漁具を持ち出し…

三悪人、聖の返り討ちに遭う

2024.01.14 本匠地区には東西に「海成層石灰岩」が細長く横たわっている。この地にある奇岩や洞穴は見事なまでにこの上に並んでいる。「聖岳洞穴(ひじりだき)」もその内の一つである。旧石器時代の石器類と人骨が洞穴内の同じ地層に発見され、かつては「聖…

冬の山古道に積もる回向

2023.12.22 以前、母が話してくれた。嫁に来る前には山向こうの実家から「三股越」の尾根を越えて隣村の直見駅まで歩いた。三股集落に嫁に来ると目の前の「久留須川」の木橋を渡って笠掛集落に入り「尾岩越」で別の隣村に出た。 三股越の尾根下には茅刈場(…

犬も歩けば棒だらけ

2023.12.19 1955年の町村合併法により「旧中野村」と「旧因尾村」が合併して「本匠村(現佐伯市本匠)」が成立した。「番匠川」の本流に位置しているという意味をその名に込めた。人口は中野村2,473人、因尾村2,558人の合わせて5,031人、予算規模は約30百万…

モヤと霧

2024.12.15 物や人の名を中々思い出せなくなった事象は老化現象として受け入れざるを得ないとしても、「次に為すべき事」をいとも容易く忘れてしまう事に複雑な思いである。こちらは深刻な病状の前兆ではないかと不安でもある。 習慣となっている朝食後の「…

因尾砦の三悪人

2023.12.10 一人は早や4時には目覚めて今やプロ顔負けの四人分の弁当作りが楽しくてならない。山を小馬鹿にしたかのような従来のランニングシューズを今回は新品の登山靴に履き替えてどうだという風に参上した。一人は案の定寝ぼけ眼で遅参した。山用地下足…

右立ち

2024.12.07 これまでどうして気付かなかったのだろう。佐伯の街ではエスカレーターで人は「右側に立つ」。日本全国、大概、「左側に立つ」。右立ちは関西方面だけの現象と思っていた。 佐伯に「左右が認識出来る」エスカレーターは商業施設の「トキハ」あた…

南海部北壁、楯ヶ城山単独登頂

2023.12.03 玄関を出ると気温2℃、今日は「楯ケ城山」に登る。「日本一大水車マラソン」の日でもある。交通規制を避けて「先輩ジイジ」が八時過ぎにはピックアップしてくれる手筈。ところが急な事態発生でキャンセルの連絡が前夜に入った。決行延期としたもの…

口笛

2023.11.30 ふるさとの山村に帰省した。再び「主夫生活」が始まった。早速、買い物に車を飛ばしていて何だか開放感が襲って来て口笛でも吹こうかという気分になった。そういえばもう何十年もまともに口笛を吹いていない。ミスチルの”口笛”という楽曲が好きで…

小さい秋

2023.11.07 明日はもう「立冬」、二十四節気では秋が終わる。「衣替え」も未だのような気分なのに秋が終わる。気候変動の影響で四季が暑いと寒いとの二季になりつつあると言う。春秋が果たしてきた季節変化のグラデュエーションがなくなるということだ。 確…

断捨離

2023.10.24 ついに有線の固定電話を放棄した。「Home 5G(wifi)」を導入したことが契機となった。といっても進歩的な高齢者といいたい訳ではない。いつのまにか携帯事業者に取り込まれてしまった結果なのである。それにしても通信速度はめちゃ速い。 それま…

傾国の道

2023.10.14 ETC車載器を設置する事にした。車で帰省するようになって高速利用時にこれがないと不便を感じるようになった為である。 因みにETC利用率は全国で94%に達している。首都高では98%だ。 それほどの高い普及率とは知らなかった。何だか置いてけぼりに…

プロスペクト理論

2024.10.10 何だか世の中ポイントサービスに翻弄されているような。夫はガソリン価格が結構な金額で、ひょっとしてポイントが付与されていないのではないかと今更疑心暗鬼になる。妻は今日はスーパーのポイントアップの日だと朝から買い物モードに入る。 ど…

月見泥棒

2023.09.30 昨日は中秋節だった。中秋節になると思い出す。幼い頃、夕闇が訪れると仲間と共に里の家々の”お供物”を盗んで歩いた。「といもぬすび(唐芋盗み)」と称し、子供達にとって秋の楽しい行事の一つだった。月見団子は兎も角、芋や柿や栗や里の豊かな…

彼岸花

023.09.24 地元の友人が休耕田にしたままの「田んぼの草刈り」の写真を送って来た。昨年、別の友人に「イノシシが相撲をとったごとある」と揶揄されていた事が頭を離れなかったに違いない。今度はどうだと言わんばかりなのである。 朝方、実家の母への電話で…